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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)5号 判決 1961年3月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人所恭之介の上告理由第一点一について。

所論自創法二条四条に規定する特別の事由以外の正当事由ありとの主張は、同条に規定する一時不在となつた地主を特に在村地主とみなす場合に関するものであつて、上告人が一審以来主張する上告人の長男が戦争に招集されたため一時訴外人に所論土地を貸し付けたものであるから小作地として買収すべきではないという主張とは別個な事由を新に主張して原判決を攻撃するものであつて採るを得ない。

同第一点二について。

原審は、所論縦覧期間の公告は、昭和二三年一月二〇日から同月二九日までの趣旨であると認定したものであり、また右公告が同年一月一〇日になされたとの事実は原審の認定しないところであるから、所論は原審の認定事実に副わないものであつて採るを得ない。

同第一点三について。

初日を算入すべきでないことは所論のとおりであるが、縦覧期間がわずか一日不足していたとしてもこれがため買収処分が当然無効に帰するものではないから、所論は採るを得ない。

同第二点について。

原審の引用する一審判決認定の如く自作地と認むべきかどうかの認定に重大、明白な瑕疵があるといい得ない以上、右認定に基き所論の程度において保有限度外面積の計算に誤差を生じたとしても、これを以つて無効原因となし得べきものではないから所論は採るを得ない。

同第三点について。

原審の引用する第一審判決認定の事情の下で買収目的地の表示に所論のような誤謬があつたとしても当然無効の原因となるものでないことは原審の判示するとおりであつて、所論は独自の見解を主張するに過ぎない。所論は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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